駅から近いものの
人形町の交差点からは比較的近い距離にあるが、細い路地裏に面していて少々わかりづらい。そのため、偶然通り掛かるという事はない場所である。また、店頭にも目立った看板や暖簾は掛かっていない。
店内は木目を基調としたシックな空間で、厨房の冷蔵庫に木目のパネルが貼られているので店全体に統一感があって、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
この日、通されたのは6席ある1階のカウンター。2階にはテーブル席が用意されているようだ。
カウンターには調味料が整頓され置かれている。
席についてほどなくすると、2階から人が降りてきて、そのままおしぼりとお茶が供された。
どのお客もこの行動に不意をつかれる様で、皆一様にえらく恐縮しながらおしぼりを手にする姿が何とも滑稽に映った。
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この中からロースかつ150gを注文。
更に気になったすっぽんカレールーを追加した。
丁寧な調理
待っている間、調理の過程をつぶさに拝見していたのだが、その所作が美しい。
まずは、注文を受けてから大きな肉塊を取り出して都度切り分けていく。
そして、脂と身の丁度境目あたりに縦に細かく包丁を入れる。更に余分なスジを落とし終えたら、肉を叩いて平坦にならす。これで第一段階が終わる。
次に肉を溶き卵の中をくぐらせて、粗めのパン粉をまんべんなくつけていく。
ここで第二段階が終了だ。
続いて、第三段階の揚げに入る。
ただし、直ぐには揚げずに、大きな鍋にパン粉を軽く落として油の温度を確かめてから。
かつを鍋底に沈めると勢いよく油が躍る。そのまましばらく火を通すと今度は温度が異なるもうひとつの鍋に移して二度揚げをして仕上げる。
この頃にお新香と調味料が供される。
左からとんかつソース、梅塩、本わさびである。
どうやらわさび醬油で頂くという事らしい。
鍋からかつを取り出すと衣の周りからシャァーという粒子の細かい音が響く。最後に丁寧に何度も振って油を落としたらいよいよ最終段階に突入する。
かつを90度傾けて縦にした状態で少し休ませる。ただこの時間がすごく短く感じた。
肉塊を切り落とす時とは異なるまな板と包丁でかつを切り分ける。
かなり神経を集中して素早く包丁を入れる。まるで我が子を送り出すかの様だ。
ロースかつ150g
きれいに盛り付けられたキャベツ。そして和芥子とレモンが添えられている。
断面はというと割と想像していたよりも火が通っている様子だ。
まずはそのままでひと齧り。ほんのりと甘く、肉の旨味が十分に感じられる。
続いて、恐る恐る梅塩に。見た目とは異なり梅の香りがそれほど強く主張する訳ではなく、塩化ナトリウムが少し穏やかになった印象を受けた。それでも個人的には普通の岩塩などの方が好みではあるが。
続いては、わさび醤油で頂いてみた。
これが予想に反して悪くない。とんかつに醤油の組み合わせは初めての体験だったが、意外とすっきりとしてとんかつの新たな可能性を感じた。
最後はとんかつソースで。しっかりと甘さが下支えしながら割とさらりとしている。
また、和芥子は上品な味わいで香り高い。
衣は全体的にサクサクとした食感が心地よいが、休ませる時間が短かったせいか食べ始めは少し衣の油が気になった。ただし、後半に向かって時間が経つにつれ徐々にサクサク感が増していった。
もう少し休ませた方がいいとするならばどちらかの揚げる時間をもう少し短くしてもいいのかも知れない。
また、衣と肉のバランスを考えると150gよりはもう少し厚い肉の方が適している様に感じた。
ご飯とお味噌汁も美味しい。
すっぽんカレールー
野菜の旨味が溶け込んで優しい味わいで美味しいのだが、色々な調味料でかつを愉しんでいるとなかなかカレーに到達できず、なかなか入り込む余地がない。