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亀泉酒造(酒造/高知)
目線はワールドワイド

念願の亀泉酒造

この日は最も馴染みがない山の日という祝日である。亀泉酒造は通常、日曜祝日はお休みだ。
ところが、今回、運転手役を買ってくれた従兄弟が直接訪問し、直談判してくれたお蔭で、祝日にも関わらず特別に見学させて頂ける事になった。

市内から車で30-40分ほど。辺りは一面の田園風景で、車以外の交通機関は使えない。
大通りから細い道に入り、しばらく進むと亀泉酒造へ辿り着いた。

昔ながらの歴史がある蔵といった趣きがある。

こちらの扉を入ると事務室になっていて、そこにひとりの男性が待っていた。
なんとその方がご主人の西原さん。自ら案内してくれると言う。これには驚かされたと同時に恐縮してしまった。

小粋なカウンターでテイスティング

ご主人から予め用意して頂いていた資料を受け取り、蔵の方へ誘導された。
左奥の方にはタンクが並んでいるのが見える。ああ、蔵に来たんだなと実感した瞬間だ。

まず最初に蔵の入口の場所に据えられたカウンター席に通された。
まるでバーの様な小粋な空間である。

席に付くと直ぐにワイングラスが目の前に置かれ、一杯目の本醸造が注がれた。
そして資料に沿って説明を受けながら、次々とお酒を頂くことになる。

飲んだお酒は向かって右端から順番に置かれていった。
どのお酒もしっかりと地に足が着いている。サラサラと水の様なお酒とは違い、どれも一本筋が通ったお酒だ。かと言ってべっとりとしたお酒とも一線を画する。

亀泉酒造で醸されるお酒の味は「バナナ」と「メロン」に分けられるのだと言う。
これは香りのベクトルの事を指していて、大きく、この2方向に大別できるのだそうだ。

その事を意識して頂くと、確かに、これはバナナ系!これはメロン系!だという事が感じられるから面白い。勿論、これはどちらがいいという話ではなく、合わせる料理や嗜好によって使い分けられるべきものである事は言うまでもない。

造り手側から見るとこの違いは酒造適合米や酵母の違いによって産み出されているという事になる。新しいお米や新しい酵母を使う度に様々な実験的な試みがされている事は想像にかたくない。あくまでもその成果に過ぎないのだ。

テイスティングはまだまだ続く

萬寿と亀泉と書かれたラベルに挟まれた何やら文字が沢山羅列された「Cel-24」が、ある意味この蔵を代表するお酒だと言っても過言ではない。香りはメロン系。口に含んだ瞬間は甘い香りを強く感じるのだが、す~っと余韻を残しながらキレていくので料理との相性がいい。

また、ラベルにはお酒の成分が書かれているのだが、同じお酒でも年によって、また、タンクによってもその数値は異なるらしい。

先にも書いた通り、右端から飲み進めている。
いま取り上げたお酒の左側には大吟醸酒が並ぶ。出来るならもっと前半に頂けると、その繊細な味わいをしっかりと味わえると思うのだが。。その点だけが悔やまれる。

新しい取り組み

亀泉酒造は昔ながらのお酒を地道に頑張って作っている蔵だという印象が強かった。
ところが、数々の新しい取り組みをされている事に驚きを禁じ得ない。

そのひとつがスパークリング日本酒。

これまで出会った事があるスパークリング日本酒はベタベタと変に甘いものが多い。
それは、普段、いいお酒を醸している蔵でも例外ではない。
軽く一杯あればもうお腹いっぱい。それ以上、杯を進められないものばかりだ。それ故にこれまで店頭で見かけても、なかなか食指が動かなかった。

ところが、こちらのスパークリング日本酒はお米の風味も残しながらすっきりとしたキレがある味わい。こちらもCel-24酵母を使っているにも関わらず甘い香りは影を潜め、ドライなテイストに仕上げている。

造りの大きな特徴はシャンパンと同じ製法で作られている事。
同じ製法で造ればいいというものではないのかも知れないが、少なくても亀泉酒造においては大きな成果となって表れている。

また、シャンパン同様に、作った年による出来の違いがあるという。実際に今回、違う年のお酒を頂いたのだが、確かに風味に違いが感じられた。勿論、経年変化による熟成の違いがあると思うが、それを割り引いても明らかに違いは見て取れた。

続いては、小夏と生姜のリキュール。

最近、酒販店ではこの様な商品を目にすることもあるが、個人的にはまったくと言っていいほど関心がないジャンルだ。

リキュールと言っても、どちらもアルコール度数は7%ほどである。
特に小夏に至ってはまるで小夏ジュースを頂いているかの様な香りの高さが鮮烈だった。

最後に蔵の中を見学

ひとしきりお酒を頂いた後、蔵の中を案内して頂いた。
醸造過程の説明から管理方法まで色々とお話を伺えてとても勉強になった。
ご主人と一滴も飲まず終始見守ってくれた従兄弟に感謝!

購入したお酒

蔵元でお酒を購入する事も可能だったが、これからお盆休みに入る事とクール便で送りたい事を考えると余分な手間を掛けてしまうので、市内の酒店にて購入することにした。

小夏リキュール

そのままで美味しいのは勿論の事、この味ならばと割ってみたくなるところだが、度数が軽いのでどうかとは思う。まだ試してはいないが、むしろヴィネグレットや魚料理のソースの香り付けに使ってみるといいのではないだろうか。

Cel-24のにごり

にごりは封を開けるとかなり勢いよく発泡する。

ご主人おすすめの飲み方である炭酸割りを試してみたが、これがなかなかいける。あまり薄くなっては本末転倒なので、炭酸は2,3割程度が適当か。

また、試しに小夏リキュールと合わせてみたが、これも意外といい。
色々な愉しみ方ができるので面白い。

本醸造

バランスが良く、普段飲みのお酒のラインナップに加わりそうな予感。

亀泉にも変革の波

スパークリング日本酒や小夏リキュールの様に新しい日本酒の在り方を探求している姿は前述の通りである。

それに加えて、日本酒の方でも変化は見てとれる。

まずひとつは本醸造に代表されるラベルの変化だ。旧態依然とした書体をやめ、細身の文字が使われている。同じ書体のお酒が増えている事から今後はこの書体のラベルに変わっていくのであろう。

そしてラベルの中に横文字が使われている点だ。
これら変革の全ては海外へ向けられているものなのであろう。その点、先に紹介した酔鯨酒造と同様である。やはり坂本龍馬を産んだ県だけに、海外へ目が向ける気質があるのだろうか。

更にどちらも酒造もホームページもしっかりと作られている事に驚かされる。
その点、どちらの蔵も時代の先端を走る蔵と言ってもいいのかも知れない。
10月になれば酔鯨酒造も亀泉酒造の近くに引っ越してくる。

その理由は現在の地では津波があったときの備えと良質の水が得られるためである。
今回、酒造で仕込み水を頂いたが柔らかく、とても良質のお水だった。

酒造りの源のひとつであるこの水を使って2つの蔵が切磋琢磨し、世界に誇る酒蔵として牽引していって欲しい。

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